デジタル専門人材派遣を契機とした地方創生へ取り組み @山形県長井市
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デジタル専門人材派遣を契機とした地方創生へ取り組み @山形県長井市

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内閣府の「デジタル専⾨⼈材派遣制度」をご存知でしょうか?行政のデジタル化を進めるため、企業が自治体に最長2年間、専門人材を派遣する制度であり、NTT東日本も12⾃治体に各1名の社員を派遣しています。
今回は、⼭形県⻑井市役所で週1回勤務する、NTT東日本 営業戦略推進室 小倉 圭 課長に話を聞きました。

※内閣官房・内閣府総合サイト  地方創生人材支援制度https://www.chisou.go.jp/sousei/about/jinzai-shien/index.html

インタビューした人

小倉 圭 課長


庁内に立ち上がった「デジタル推進室」室長を拝命

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デジタル専門人材派遣に係る委託状交付式での集合写真

--はじめに、⻑井市について教えてください。

小倉:山形県の西部に位置する長井市は、最上川渓流にあり、西側には山間部が広がる、自然豊かな町です。道の駅が「川のみなと長井」というネーミングでもある通り、街中に水路が張り巡らされ、山間部には長井ダムや三淵渓谷などもあります。
人口は2.6万人で、そのうち約4割を高齢者が占めています。古くから商工業で栄えてきた地域で、市街地は中央地区と周辺5地区でコンパクトにまとまっています。

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三淵渓谷

--なるほど。風光明媚という言葉がぴったりですね。人口構造は、いわゆる地方都市に多く見られる特徴を持っていますね。特に魅力を感じているのは、どのようなところですか?

小倉:地域を走る山形鉄道が、とてもレトロな雰囲気なんです。あとは、地場産品の販売所に地域の野菜・果実がたくさんあって、季節ごとに楽しめるところですかね。桃が美味しくて驚きました。

--いいですね。自然の緑を背景に、鉄道を写真におさめれば、かなり「映える」画になりそうですね。そして新鮮な桃、一度食べてみたいです!
さて、長井市で現在勤務をされているとのことですが、どのような経緯があったのでしょうか。

小倉:内閣府がデジタル専門人材派遣制度を開始し、いち早くNTT東日本が協力企業の1社として名乗りを上げました。自身としてはこれまで、営業・SE、サービス企画・開発、経営企画と幅広い業務を経験してきましたが、入社前は公務員を志した時期もあったことから「これを機会に本業とは異なるフィールドで地域貢献ができるのであれば」と考えて、自ら挙手しました。

--自治体への貢献にやりがいを感じていらっしゃるのですね。お仕事は、どのようなことをされているのでしょうか?

小倉:庁内に「デジタル推進室」という組織を立ち上げていただき、その室長を担っています。部下は全14名で、その大半が20〜30代。各課と兼務で所属してもらっています。組織のミッションは、かっこよく言うと、「長井市におけるSociety 5.0の実現に向けた未来技術の活用等の施策を推進すること」です。
※内閣府:Society 5.0とは https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html


--若い職員の方が中心で、まさに「次世代の長井市」を担う人材ですね!「デジタル推進室」ということで、長井市の抱える課題について、ICTを活用した解決策を検討するというイメージでしょうか。

小倉:そうですね。一言で言えば、「長井市版スマートシティ」の検討を行っています。特にICT技術の活用や導入について、提言を行っています。
人材育成も重要なミッションで、未来のICT活用推進を担う若い人材に対し、最新のICT技術に関する勉強会を行っています。


町ぐるみでの協力体制が素晴らしい

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--「⻑井市版スマートシティ」の構築に向け、具体的にどのような取り組みが検討されてきたのでしょうか。

小倉:まず庁内での取り組みとしては、RPAを活用した定型業務の自動化や、ペーパレス会議の徹底、外部の有識者との意見交換会をWeb会議ツールを用いて開催するなど、DXの推進を行いました。
総務省:RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上) 
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000043.html


--庁舎内で率先してデジタル化を推進してこられたのですね。市民の方向けの取り組みはいかがでしょうか。

小倉:市民サービスの拡充という点でも、この1年、たくさん取り組ませてもらいました。全国的に見ても当時は先進的だったオンラインでの成人式の開催や、デジタル地域通貨の実証実験、eスポーツの大規模なイベントの開催にも携わりました。

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オンライン成人式の様子

--本当に多岐にわたりますね。長井市で働く中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?

小倉:地域の未来を真剣に考えている方が多くいらっしゃることに感銘を受けましたね。まず、市長はじめ庁内の皆さんは、新たな取り組みにとても積極的で、ご提案・ご相談にも「やってみましょう」というポジティブな言葉を多くいただき、背中を押して頂いています。
地域の事業主さんも同様で、デジタル地域通貨の実証実験を行った際も、協賛いただいた店舗・施設の方は実証開始から振り返りまで積極的な協力をいただきました。
住民の方も実証に積極的に参加してくださり、事後のアンケート回収率もなんと約6割。市民モニタ募集のために店頭に立った際も、「これは自分の孫のためになるの?なるなら協力します」と声をかけてくださった方がおり、とても印象的でした。

--長井市がより豊かで快適に暮らせる町になるように、町ぐるみで取り組んでいらっしゃるのですね。


サステナビリティ・トランスフォーメーションのやりがいと難しさ

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--長井市での取り組みを伺ってまいりましたが、改めて振り返って、地域を盛り上げることのやりがいや、難しさはどのようなところにあるとお考えですか?

小倉:まず前提として、私の役割は「自分自身で動く」のではなく、「自治体の方が自律的にやっていただけるよう支援する」ことにあると考えています。一過性の稼働支援ではなく、人を育てて文化を変えることが必要だということです。そうすることで、持続可能な社会を作ることができると思います。
 
--まさに、サステナビリティ・トランスフォーメーション(※)ですね。「中長期的な目線でのフィールド作り」を大切にされているのですね。

小倉:その通りです。その上で、普段ICTに触れていない職員の方に、ICTを活用した地域課題の解決策や、スマートシティの大きな絵を描いていただくための地盤づくりを行ってきたのですが、これが特に大変でした。最新の技術に触れてもらう体験やデモ、フィールドワークなど半年ほどかけて色々な施策を行い、今ではメンバーから自然と「●●を使えば・・・」というICT活用アイディアが出てくるようになりました。
このような発言を聞くと、やってきてよかったと感じますね。

※サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX):短期的な売上の追求ではなく、ESGとの両立による持続可能性を前提にした事業活動のあり方を示す言葉。経済産業省が2020年8月に発表した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ」においても詳述されている


施策の実行ではなく「文化を創る」

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--最後に、今後の目標や目指したいこと、チャレンジしたいことがありましたら教えてください。

小倉:短期的目標としては、まずは長井市版スマートシティの核となる、交通の最適化を実現することです。周辺地区から中央地区への移動が困難な方、特に免許を返納された、もしくはされる高齢者の支援として、路線バスの見直しや買い物支援の仕組みを、ICTを活用し実現したいです。
そして中長期的目標としては、“地域まるごとDX”の実現です。自治体施策や庁内のDXだけでなく、企業のDX、学校のDXなどが当たり前となるよう、それを支援し、地域の方々と共に文化を創っていきたいと考えます。

--施策の実行ではなく「文化を創る」ということがポイントですね。

小倉:そういうことです。僕は、長井市の街も人も食べ物も、全部好きです。着任してから、むしろネガティブな感情を抱いた記憶がないくらいです。
さっきまでICTやDXとお伝えして来ましたが、そうは言っても何でもデジタル化することが正しいわけはなく、例えば美しい田園風景を守っていけるよう省力化・効率化につながるICT技術を見極め、活用していくことが、地域貢献・地方創生に繋がるのだと心に刻んでいます。
数十年後にまた長井市を訪れた際に、今の長井市の良いところを維持しながらも、ICTが多用されたスマートシティとして、市民の皆さんが安心安全で便利に、豊かに生活が出来ていたとしたら、その時初めて自分の仕事の成果を感じられるのだと思います。
そんな将来像に向けて、引き続き地域の皆さんと共に尽力していきたいです。

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